虹色パレット
そう言うと、蒼空が腕にしがみついてきた。

それにドキッとした俺。


「とにかく、今そっち行くから。待ってろよ」


それだけ言うと、電話を切った。


蒼空を見れない。
きっと、まだこっちを見ている。


「連れて行ってください」



「ダメだ」



「あたしは、あの時のあたしじゃないんです」



腕を掴む力が強くなる。


『あの時のあたしじゃないんです』


それはそうかもしれない。でも、これは男の喧嘩だ。

それに行ったって、ゴリ男には帰れと言われるだろう。


「どうして、あたしが笹河さんに会いに来たか、わかりますか!?」


涙ぐんで、唇を震わせて。

愛しく思える、その顔。


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