虹色パレット
「見たくもない」



「絶対護るって、どうせ口約束なんだよ」



「だから、恋愛はしないのか。弱くなったな」



そうだよ。
逃げてんだよ、俺は。

でも、どうしろって言うんだ?



「笹河さん、自分を見失わないで」



振り返ると、組長が立っていた。

真剣な顔で、俺を見つめていた。



「阿波さん、笹河さんは今は恋ができないだけなんです。こんなに苦しんでいるのも、恋が笹河さんの邪魔をしているんです」



組長はギュッと唇を噛んで、阿波を睨むように見つめる。



「もう少ししたら、きっと笹河さんの好きな人が現れます。だから…今はそっとしておいてください」



涙が溢れた。




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