虹色パレット
ウェディングドレス姿の蒼空が、窓から空を見ていた。



「蒼空っ」



千波が呼ぶと、驚いたような顔で振り向いた。


厚化粧かと思えば、ナチュラルで。



「ち、千波、笹河さん…」



「よぉ」



蒼空が犬のように走って近づいてきた。

馬鹿だな、転ぶぞ。



「あ、あの」



「おめでとう」



おめでとう。

蒼空。



幸せになれよ。



言葉にできなかったが、蒼空に届いた気がした。


届いただろ?


涙ぐんで、笑う蒼空。



「化粧落ちて、恐ろしい顔になるぞ」



「な、なりません!あたし、可愛いから本当は化粧なんてしなくたってねぇ!」



「自分で可愛いって言うなよ」



「うるさい!」



これが、本当に最後かもしれない。



こいつとこうやって、馬鹿やるのも。



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