虹色パレット

×新しい命×

「痛いっ、痛い、痛い!」



「頑張れっ」



「無理だってばぁ!痛いー!」



俺も痛い。

千波が強く俺の手を握りしめているからだ。

爪が刺さってる。



「お母さんになるんでしょ!」



産婦人科の木澤先生が、必死に叫ぶ。

そうだ、そうだ。

お前は母親になるんだ。



「うぅっ!笹河さんの…馬鹿ー!」



その叫びが合図かのようにすぐに産まれた。


俺は父親じゃないし、千波の家族でもない。


なのに、嬉しくて…感動した。


そっと小さな手を指先で突っついてみたら、ギュッと握ってきた。


温かくて、柔らかくて。


父親のような気分。



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