虹色パレット
車から降りると、二人は千波に抱き着いた。


やっぱりな。



「千波ぃ!会いたかった!」



「病院でも、同じこと言ってたじゃない」



うっとうしそうにしていた千波だが、顔は笑っていた。

嬉しいなら嬉しいって言えっつーの。



「笹河さん、ありがとう」



二人は俺の手を掴んで、何度も頭を下げた。


感謝されるようなことは、ひとつもしていないのに。



「千波さんが頑張ったんですよ。俺はただ…隣にいただけです」



「それが重要なんだ。ただ隣にいるだけでも、千波の心の支えになった…本当にありがとう」



俺が…心の支えに?

手を掴んでいただけなのに?

隣で頑張れとしか言えなかったのに?



「ありがとう」



何故か、泣きそうになった。



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