虹色パレット
大切なものなんて……もうない気がしたんだけどな。

龍平の後ろ姿を見ていると、千波が俺の腕を引っ張った。


「ん?」


「笹河さんは殺人犯なんかじゃないよ」


そう言って、俺の脚の傷口にハンカチで軽く拭いた。


「悪い…」


「ううん。笹河さんが悪いわけじゃないよ。ねっ、早く中入ろうよ」


ギュッと俺の腕をつかんだ。


…あぁ、俺はまた大切ものを作っていたんだ。

千波だって、麻波だって……空だって……。


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