くじらとかめとつきのふね
それを聞いたかめは

くじらの背中のはしっこから

ちゃぷんと海に飛び込むと

くじらの大きな

真ん円おめめの前まで泳ぎ

かめの背中を見せながらいいました。


「そんなんだったら、背中の甲羅に
くじらの名前をひびいれとこう。
いつでも還ってこられるように」

さっきまで、大きなくじらの背中の上に

のんびりぽつりといたかめの

小さな背中の甲羅のひびに

くじらの名前と絵が

ちゃんと入っていました。



くじらはそれをみると

ふしぎなくらい安心しました。

波の音がいつもよりも静かに

いつもよりもよく聞こえました。

「ありがとう」

「どういたしまして」

くじらは背中から

ふしゅーっ、しゃわしゃわしゃわ

と水を噴き出しました。

海に散らばるきらきらに

小さな魚が喜びます。

かめもにっこりほほ笑みます。
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