色は聴こえないけれど
色は聴こえないけれど
描く。
黒い軌跡を辿り、色を落としていく白い画用紙。
滑らかな曲線に僅かな直線。
ももに画用紙を貼ったパネルを当て、左手で支え描く。いつものスタイル。
「なぁ、少年」
「ん~?」
「さっきから気になっていたんだが……」
動かぬ彼女。唇を開いた。
「胸がない事か?」
描く曲線。美しい影。それをそのまま落とし入れる。
「ボクの外見なんかどうでもいいさ。それよりもリズム」
「はい?」
「もっと歌うように動かしてくれよ。キミなら容易いだろ?」
描かない。
唇を尖らせ手を指揮者のように動かす彼女。
「はいはい……。このリズムでいいか?」
おそらく要望通りのリズムを鉛筆と紙で奏でてみる。
「ん~。マシにはなったね」
なんともわがままな令嬢だこと。