色は聴こえないけれど
描く。
目を閉じ、姿勢よく椅子へ座る彼女。
足は左へやや流れ、両手は揃え膝へ。膝には薄く小さな毛布。
目を開く事のない彼女。
今まで見たことのなかった彼女の姿。
「少年」
「今度はなんだよ」
「音から察するに、ボクの胸をしつこく描き込んでいるな?」
「うっさい」
生意気ににやける彼女。嬉しそうにも、からかっているからにも取れる顔。
「そういうの、少年にはまだ早いぞ?」
「難しいんだよ!」
「ま、そういう事にしてやろう」
表情を戻し、姿勢を直した彼女。
膝にかかった毛布を少しだけずらし……。