あひるの仔に天使の羽根を
「ああ。人為的に作られた土地に、それ以前の居住の記憶を持つ…先住者が居る。更には旭と月も…外部からの"誰か"から知識を与えられている。
尚且つ、芹霞と出会ったという13年前の記憶を何故持てる?」
うん、あたしもう思う。
「そしてその先住者に気づかれることなく、システムが発動している。玲でも1ヶ月はかかる巨大なシステム構築を即座に作成実行出来るのは不可能だ」
あたしは、こくんと唾を飲み込みながら、言葉の続きを聞いた。
「システムを先に作っていたか、或いは即座に構築出来るだけの他の力があったのか。魔術……まあ、人外の力の作用も否定は出来ないが、ひっかかるのは、」
――関東地方の大企業に影響を出した停電。あれに対して公機構にたてついていた処を各務翁が見つけ、
「平凡に暮らしたいはずのレグが、何故停電で目立つ行動をしたのか。あの停電にどれだけの意味があったのか」
「ボクみたいにUPSつけずに、プログラムぶっ飛んじゃったのかな~? もしかして格闘ゲームの開発プログラムとか?」
「いや、由香ちゃん。あの時は確か、新作が発表された直後だったよ。クリア目前で僕のゲームデータ消えたからよく記憶してる。大体開発プログラムが停電にやられたのなら、個人ではなく会社レベルで抗議していると思うよ?」
「だとしたら。完全"私的な何か"を開発していたということだな。そして停電を契機に"約束の地(カナン)"に移り、誰にも気づかれることなく、さっくりとシステム統制をしたというわけだ」
「うーん、例え"KANAN"開発者とはいえ、無理な話だと思うな、ボク」
それでも、やり遂げている事実がある。
「突然変異……か」
櫂はそんなことを言い出して少し考え込むと、やがて嘲るような嗤いを作った。
判る。
櫂がこんな表情をする時は、何かに思い至っているということで。