あひるの仔に天使の羽根を

「玲。レグの家に、シキミが寝ていた形跡がなかったんだろ?」


玲くんは、櫂を訝しげに見ながら頷いた。


「他に何かなかったか? 例えば何かの…機械の類が」


「……? ああ…壁にテレビが」


「……ふっ。何故テレビだ? 寝たきりの娯楽か?」


「……!!! だけど、櫂。それでいけば……」


玲くんも何かに考え至ったみたいだけれど、今の会話の流れでどうして櫂と同じものに行き着くのか判らない。


紫堂の従兄弟は不思議だ。


「そうだ。それが、遠坂と束になってもお前が…コード変換が追いつかない理由じゃないのか?」


重要なことを言っているんだろうけれど、話の筋が判らないあたし達。


先に痺れを切らした由香ちゃんが、代表して口を開いた。


「あのさ~、お話中悪いんだけれど。ボク達にも判るように説明してくれないかな~。そのうち如月、寝出すぞ?」


「!!! どうして俺!!?」


……この男、本当に寝ようとしていたフシがある。



すると櫂は、自信に満ちた不敵な笑いを浮かべる。





「"約束の地(カナン)"に来る前に死んでいるんだ、娘のシキミは」





「「「ええ!!?」」」



さすがの桜ちゃんも、驚いた顔をしている。


声には出さないけれど。
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