あひるの仔に天使の羽根を
 
不機嫌そうな櫂のひと言で、玲も遠坂も"意地悪"を止めたけれど、芹霞はぼんやりとしたまま。


玲や遠坂を見ているようで、見ていないような。


こいつが今何を考え、何に頭をいっぱいにしているのか気になる処だけれども、それを知りたくない気持ちも大きい。


どうせ俺のことなんて考えてねえんだろうし。


俺は頭をがしがし掻きながら、緋狭姉を思い出した。


よからぬ思考を消すには、緋狭姉の存在はより効果を発揮する。


俺の中での緋狭姉の存在は、でかいんだ。


あの巫山戯た物言いは無性にむかつくけれど、だけどそれがあっても、此処にいる誰もが絶大なる信頼感をおいている、緋色に染まった美女。


元々、緋狭姉の発案で今俺達は此の地にいるけれど、多分今じゃ、緋狭姉が知りたがっていた解答の大方は、彼女自身既に手に入れているのだろう。


そこに至った経緯は、部分的に俺達が役立ったのかも知れねえし、氷皇だって自ら動いているのだから、緋狭姉だって此の地でおとなしくしているわけねえし。


全てを悟っているからといって、簡単に解を公開して、俺達を解放する緋狭姉でもねえ。


解を知りながら、同じ結果に誘うヒントだけを与える。


俺達自らに考えさせるんだ、いつでも。


だけどいつでも解答に行き着くのは櫂や玲だから、今度ばかりは俺も頑張ってみようかなって、俺は俺なりに目を瞑って必死に色々考えていたつもりだったけれど、寝ているとか思われるし。


違うよ、考えていたんだよ!!!

そうだよ、だけどさっぱりだったんだよ!!!


その後与えられた情報を元に、俺なりに考えて整理してみる。


"約束の地(カナン)"は、複数の男の思惑で作られた人工都市。


まずは各務翁。


元子爵っていう肩書きを持っているが、元老院をよく思ってなかったらしい。


それを見返すだけの材料を持ってレグが接触した。


永遠を与える肉体を持つ"天使"の探索。

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