あひるの仔に天使の羽根を
 
「それから各務家。

当主の樒が儀式と祭を断行させたいのは何故か。死んだはずの千歳がなぜ生きているか」

各務には、歪んだ愛が存在するらしい。


樒と地下牢の老人との愛。

千歳と叔父の柾との禁断の愛。

須臾の…恐らく生前美しかった…屍体の愛好趣味(ネクロフィリア)。


「屍体というより、"美しい"ものしか愛せないのだろう。醜いものに関しては、憎悪の対象だ。千歳に対してのように」


櫂は千歳にしか言及しなかったけど、すげえ嫌われていた俺だってそうだろ。


だからあんな形で嘲り笑いながら、芹霞と玲が付き合ったことをばらしたんだ。


大きい溜息をついた俺の横で、玲が声を発した。


「僕は須臾自体に疑問が湧いている。守護石使いという以外に、まあ久遠もだけれど闇の力を行使出来ること。

そして須臾は、恋愛を禁止されているといってたが、精神性はともかく…肉体的な異性の接触は間違いなくある。多分それが…その…人形に入っていた男達なんだろう。1人や2人の話ではないぞ?」


「な、何で玲くんそんなこと、判るの?」

芹霞が真っ赤な顔で玲に訊けば、


「ん? 僕の勘?」


優しくそう言ったけれど、お前…実経験に基づく観察眼とか言ってみろよ!!


何だよその"肉体的な異性の接触"って。


はっきり言えばいいじゃねえかよ、


「セ……」


「言うなよ?」


玲がえげつねえ顔でにっこり笑ったから、俺は口を噤んだ。


やっぱこいつ確信犯だ。

下ネタ用語だって平気で浮かぶ過去あるくせして、芹霞の前ではいい人ぶって、僕の身体の成分は誠実と優しさで出来てますとか言い続けるつもりかよ!!?


誠実な奴がそんなにキスマークつけねえだろうが!!!


しかし玲は、そんな俺に気づいているのに、知らんぷりだ。


「それから、各務翁を始めとした柾、千歳の顔と久遠や須臾の顔が違い過ぎるのも気になる。母親が違うとはいえ、あそこまで似ない兄妹も珍しい。それと樒以外なぜ母親は、揃いも揃って病気で16歳以上生きられない?」


櫂は玲を見たまま、何かを考え込んでいるようだ。
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