あひるの仔に天使の羽根を
駄目だ。俺、置いてきぼりだ。
口尖らせて説明を求めようとした俺に、櫂の声が重なってしまった。
「その他判らないのは、この地下にある魔方陣や石の扉、各務の迷宮などの意義。それからこの地のルール定義。それからあの双子の天使のこともだ」
「……月ちゃんだね?」
玲が堅い顔をして言った。
「ああ。元々あの双子は、食料庫が"深淵(ビュトス)"にあると言っていた。"深淵(ビュトス)"にあるのは"生き神様"と呼ばれる男を食らう化け物と、電力が施された実験…飼育施設、そして緋狭さんが言うには饗宴……サバトが繰り広げられている場所…」
"生き神様"と聞いたら、唯一の目撃者の俺が口を挟むしかねえ。
「しっかしよー、芹霞と逃げている時には、あの地下にはそんな色々な場所があるようには思えなかったけど。嫌に監獄の空き部屋は多かったけどさ」
まだ抜け道があったんだろうか。
「"生き神様"だってひっそりと、月の光に照らされて侘びしく人間食ってたしよ。食料庫…っていう感じではなかったが」
「月の光?」
櫂が目を細めた。
「お前、地下に下りたんだろう? 何で月が見える?」
「そうだろ? だけど高窓から見えたんだ。間違いねえ」
櫂は考え込んでしまった。
「重力子による地形変化…が関係あるのかな」
玲の声。
「あるとすれば、その意味合いが重要だ」
櫂は、地下に月が見えたことを重く受け止めているらしい。
俺はさっぱりだ。