あひるの仔に天使の羽根を
どうして――
物事をよく考えられないのだろうか、あの馬鹿蜜柑は。
衝動的。本能的。
感情的。狩猟的。
理性と自制心からかけ離れた処で、暴走している気がする。
芹霞さんへの恋情を強く抱く今となっては、なけなしの理性は、芹霞さんだけに向けられ、
完全制御出来るならまだしも、結局はまた暴走。
尻拭いをするのは、私の役目となる昨今。
いい加減にして貰いたい。本当に。
"無知の森(アグノイア)"は――
"約束の地(カナン)"における3つの領域のうちの1つ、"中間(メリス)"と私達がいる"混沌(カオス)"を連結し、そして妨げる役目があるらしい。
3つの領域の抗争を認められている夜間。
旭は、旭なりに策を練り、"中間(メリス)"からの"狂信者"が"混沌(カオス)"に簡単に出入りできぬよう、自己防衛の為のいろいろな仕掛けを施したらしい。
子供が考えた罠にうっかり嵌って簡単に死ぬような……そこまで馬鹿な蜜柑色ではないだろうが、だからこそ、そんな馬鹿な死体を見つけて思い切り笑い飛ばしてやりたい気もする。
私に笑うという表情が出来れば、だが。
笑うという表情を作るのは非常に難しい。
威嚇ばかりする煌とて、笑い顔は安易に見せる。
羨ましいほど――。
私は、感情の体現が不得手だから、恐らくいつものように心の中で毒づいているしかない。
それに不具合を覚えているわけではない。
私に感情は必要ない。