あひるの仔に天使の羽根を

・至近 櫂Side

 櫂Side
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凄く、嫌な予感がするんだ。


ずっとずっと、不安に駆られている。


芹霞が妬いたその事実に、俺は気が焦って。



思考が――まとまらない。


まだまだ考えねばならぬことがあるというのに。


例えば久遠、須臾を始めとした各務の住人のこと。

例えば13年前の刹那や久遠、旭のこと。

例えば旭、月の双子の天使の意義。

例えば今開催されたKANANのこと、そして外部者を招いた意味。

例えば白皇、或いは藤姫の干渉部分。

例えば芹霞の邪痕、或いは"約束の地(カナン)"における役割。

例えば陽斗と酷似している者達の役割と紫堂との関係。

例えば姿現さぬ"断罪の執行人"と此の地の大罪とされるものの規範。

例えば"深淵(ビュトス)"の本来の役割。

例えば儀式、祭…宗教の意味。

例えば緋狭さんがわざと隠蔽して示唆した部分。

例えば俺達が無様なくらい転がされている理由。


そしてある1つの仮説。


それを突き詰めるための情報が転がっているというのに、俺はそれを結論として上手く結びつけることが出来なくて。


実証が出来ない。


それ以上に心を占めるものに苛まされるから。


芹霞と玲が気になって仕方がないんだ。


俺は須臾を芹霞と間違えた。


許されない失態。大罪を犯した。


どうして須臾を、一時でも愛しいと…永遠を捧げようと思えた?

どうして…芹霞だと思えた?


須臾に対する想いは、完全芹霞へのもので。


何度も芹霞の目の前で、俺は――。


だから。


玲と、元に戻すために付き合うフリをした。


そう、だろう?
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