あひるの仔に天使の羽根を

そのおかげで、俺は元に戻って、芹霞の隣に居る。


今まで通り、いや…それ以上に芹霞に恋をして、更に気持ちが膨れ上がった状態で、その隣にいるというのに。


…お前の心は、何処にある?


俺の記憶では…お前は須臾に対して妬かなかった。


――バイバイ。


笑顔で俺に別れを告げた。


遠坂には…妬くくせに。



なあ――


演技なんだよな?


俺から離れようとしていないよな?


だけど震える芹霞の姿が目に焼きついて。


――櫂じゃなかったんだ……。



ザアアアアア。


頭上から流れ出る冷水が、出口のない熱い想いを宥めるように身体全体に降り注ぐけれど、心だけはまだ熱を孕んだまま。


2ヶ月前なら、まだお前が近くに居た。居ると感じられた。


玲と共に居る入院生活で、少しずつ食い違っていったのか?


12年だぞ、12年…俺は芹霞に片想いしていて…そして今これか?


俺が正気を失ったその間、お前と俺の仲は決定的になってしまったのか?


そんなこと――


俺が許すはずないだろう?



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