あひるの仔に天使の羽根を
 
「久遠にも須臾にも"永遠"を馬鹿にされて、だけどそんなことないって信じていたのに、何勝手にすんなり須臾に永遠あげてるのよ、櫂の裏切り者ッッ!!!」


「芹霞……」


「あたしが忘れようって言ったのは永遠を死守する為で、あたしが離れようって言ったのは、8年前以上に仲良く理解しあいたい為だったのに。櫂を須臾にあげるっていう意味じゃない!!! 何でそれが判らないで、あたしを見捨ててすぐ他の女の処にいくのよ、頭いいのならあたしぐらい完璧に理解しなさいよ、この不埒な不届き者がッッッ!!!」


散々叫んで、もう声はガラガラで。


「あたしとの"永遠"って、櫂にはそんな軽いものだったの!!? もっと絶対的で不変なものだって思っていたのはあたしだけ!!? 櫂なんて…大嫌いッッッ!!!」


そう言ってから、顔色を変える櫂を目にして、またもや大泣き。


「違う違う、あたしこんなことが言いたいんじゃないの、嫌いなわけないじゃない!!! 何言わせるのよ、櫂の大馬鹿者~ッッッ!!!」


もう、何に対して怒って泣いているか判らない。


あたしはただ謝ろうと。


櫂に、勝手にあたしの櫂像を押し付けてごめんね、と。


「…なんであたし櫂に、こんなに怒っているのよ~~ッッッ!!!」


これだったらまるで、


「喧嘩別れしたいわけじゃ「悪かった」


あたしが言い終わる前に、櫂があたしをぎゅっと抱きしめて座り込んだ。


「離せ、離せ!!!」


暴れるけれど、力強い腕は解けず。


あたしの髪に顔を埋めるようにして、低く呟かれる。


「他は? 他の…俺の悪い処は何処だ?」


本当にそれは、泣いているような震えた声で。


「お前から拒まれる要因、全て教えてくれよ。俺…お前をそこまで追い詰めていたことに気づいていなかった」


あたしは、櫂を傷つけたい訳じゃないのに。


どう考えても、押し付けがましいあたしが原因なのに!!


ああ――


8年前のあたし達なら、こんなに食い違わず、何も言わずに通じあえたのに!!


きっと…あたしは顔に出していたんだろう。




「………。なあ…8年前に……」




――芹霞ちゃあああん!!



「あの姿に…戻って欲しいか?」



身体を離して、真っ正面から覗き込んでくる漆黒の瞳が、焦れたような色を見せた。
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