あひるの仔に天使の羽根を
 
いつものような不敵な笑いで、だけど喜悦に満ちたその顔。


「ご、誤認だから!!! 別に恋愛感情の嫉妬では…」


そう焦りながら否定に向かえば、


「誰も恋愛感情の"嫉妬"とは言ってないけど?」


「!!!」


「心当たりあったわけだ? 

少なくとも…"嫉妬"だったわけだ?」


にやり。


ムカつく程美しく整った顔が、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。


駄目だ、櫂のペースに呑み込まれる。


あたしはぶんぶんと頭を横に振って。


その動きを、頬に添えた片手で櫂が制した。


「今は…否定させてやるけど、これだけは覚えておけ。

俺はずっと…嫉妬しまくりだ。お前の近くに居る全ての男に…煌にも玲にも。無論、恋愛感情でだ」


それは怖いくらいに真剣な表情で、真っ直ぐにあたしの心に切り込んでくる。


「お前と出会った、12年前からずっとだ。

俺は何1つ変わってはいない。口惜しいくらいに…」


逃れたい、だけど逃れきれない…熱を孕んだ漆黒の瞳。


櫂の美貌が揺らめき立ち、静かに形いい唇から言葉が紡がれる。



「芹霞が好きだ。

苦しいほど、狂おしいほど、いつもお前に恋い焦がれている。

信じられないかもしれないが、須臾の術中にいた時でさえ、新たにお前が好きになって欲しくなって、凄く苦しかった。玲とを推し進めたのは俺なのに、それを酷く後悔してもがいていた。

俺の全ては……お前だけのものだ。誰にもやるつもりはないし、お前の全てを、俺以外の誰にもやるつもりはない。

永遠に――…。

俺の"好き"はそういう好きだ。

俺は我侭で身勝手で押し付けがましい子供で…お前を諦めることは出来ない。お前を隣に置く為なら、俺は喜んで永遠をお前に捧げるよ。

今も昔もずっと……」



どくん。


陽斗が大きく飛び跳ねた。


それは煌の様な、玲くんの様な…切々と想いを訴える響きがあって。


それでなくとも緋狭姉から、恋愛感情があるように言われていたのもあるし。


明らかに…永遠の幼馴染からの言葉を超越している。


それを感じてしまった。

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