あひるの仔に天使の羽根を
・告知 桜Side
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櫂様を追って芹霞さんが消えた後、頭を抱えるように項垂れてソファに座り込んだ…玲様の沈み様は酷いものだった。
さらに私の隣に胡座をかいて、いつも以上にふて腐れたように…天井を睥睨する煌からも、相当の苛立ちをひしひしと感じた。
私達の心の中で、芹霞さんは櫂様のものだという認識がある限り、こうした事態をも覚悟していなければならないだろうけれど、それでも納得出来ないのが恋愛感情らしい……ということを、私すら思い知らされて。
櫂様という強大な男を相手取り、動き出したのは彼らの意思。
玲様は、お試しであろうと"彼氏"という立場で芹霞さんを縛り、尚且つ言葉でも去り際の彼女に何かを囁いて縛りつけた。
それでも、不安が消えないのはよく判る。
芹霞さんが何をしようと部屋から出て行ったのか判らないけれど、それでも彼女から櫂様に動く心があるのは否定出来ない事実で。
恐怖して触れられると身体に痛みを感じようとも、櫂様を追いかけたのが現実で。
櫂様に対して、衝動的になるのは昔から変わらぬこと、誰もが判っている。
そこに明確な意味があるとすれば、それは彼女に恋する男達にとっては、耐えがたき苦痛であり、どんな優位性でもって縛っても心安らぐものではない。
芹霞さんの心が向かない限り…いや、向いたとしても、櫂様という存在は大きすぎるのだ。
「15分って言ったのに、櫂が遅いよね。僕見てくる」
やがて、玲様も部屋から出て行った。
気になって仕方がないのだろう。
「如月はいいのかい?」
遠坂由香が困ったような顔を煌に向けた。
「……いいんだよ。此処は…俺の出る幕じゃねえの、判ってるし」
だけど本当は行きたくて仕方が無い馬鹿蜜柑。
ぼそぼそとした言葉の節々に、刺々しい響きが込められている。
遠坂由香は私を見たが、私は黙って首を横に振った。
私だって判っている。
想うだけで…私は精一杯だ。
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櫂様を追って芹霞さんが消えた後、頭を抱えるように項垂れてソファに座り込んだ…玲様の沈み様は酷いものだった。
さらに私の隣に胡座をかいて、いつも以上にふて腐れたように…天井を睥睨する煌からも、相当の苛立ちをひしひしと感じた。
私達の心の中で、芹霞さんは櫂様のものだという認識がある限り、こうした事態をも覚悟していなければならないだろうけれど、それでも納得出来ないのが恋愛感情らしい……ということを、私すら思い知らされて。
櫂様という強大な男を相手取り、動き出したのは彼らの意思。
玲様は、お試しであろうと"彼氏"という立場で芹霞さんを縛り、尚且つ言葉でも去り際の彼女に何かを囁いて縛りつけた。
それでも、不安が消えないのはよく判る。
芹霞さんが何をしようと部屋から出て行ったのか判らないけれど、それでも彼女から櫂様に動く心があるのは否定出来ない事実で。
恐怖して触れられると身体に痛みを感じようとも、櫂様を追いかけたのが現実で。
櫂様に対して、衝動的になるのは昔から変わらぬこと、誰もが判っている。
そこに明確な意味があるとすれば、それは彼女に恋する男達にとっては、耐えがたき苦痛であり、どんな優位性でもって縛っても心安らぐものではない。
芹霞さんの心が向かない限り…いや、向いたとしても、櫂様という存在は大きすぎるのだ。
「15分って言ったのに、櫂が遅いよね。僕見てくる」
やがて、玲様も部屋から出て行った。
気になって仕方がないのだろう。
「如月はいいのかい?」
遠坂由香が困ったような顔を煌に向けた。
「……いいんだよ。此処は…俺の出る幕じゃねえの、判ってるし」
だけど本当は行きたくて仕方が無い馬鹿蜜柑。
ぼそぼそとした言葉の節々に、刺々しい響きが込められている。
遠坂由香は私を見たが、私は黙って首を横に振った。
私だって判っている。
想うだけで…私は精一杯だ。