あひるの仔に天使の羽根を
「どうして!!?」
甲高い声で空気を裂いたのは須臾で。
「どうして櫂が戻るの!!? どうしてその女が出張るの!!? どうして私ばかりこんな目に遭うの!!?」
須臾は、胸元から櫂様の石を取り出す。
「許さない、許さない!!! 櫂は私のものよ!!!」
一瞬。
須臾を包んでいた漆黒色が、ぶわりと拡大したように思えた。
だがそれはすぐに消え。
「どうして、どうして、どうして!!?」
須臾はヒステリックに叫び続けた。
「こんな、こんなはずじゃ!!! どうして使えないの!!? 今……失った分を補充してきたのに」
闇の補充…それが、緋狭様の言う"饗宴"、サバトのことか。
そしてこの女は、サバトの魔女として、多くの男に弄ばれたのか。
「もう、俺の闇の力は使わせない。3度目は許さない。
本来の闇は制御出来ず、だから俺が制御した闇の力を利用するとは、随分と姑息な手段に出たものだ」
櫂様は、冷たい面持ちで須臾に近付いた。
「誰の差し金だ?」
「そんな…櫂は絶対戻らないからって、言ってたのに」
須臾は1歩退いた。
「話が…違う!!!」
「誰のかな?」
須臾の後ろに回り込んだ玲様の声。
櫂様と玲様に挟まれた須臾は、短い悲鳴を上げた。