あひるの仔に天使の羽根を
イクミの手助けの甲斐があり、なんとか名称を添えた簡易図は完成する。
「櫂、だから何だよ? 今更…」
煌が腕を組みながら首を捻る。
どれもこれもが、此の地の主要箇所として、此の地の住人に聞いたものばかりだ。
中には行ったこともないのもあるけれど、全部で10個。
「……10個?」
偶然か?
しかし依然考え続ける櫂を見れば、彼の思考には偶然のものではないのだろう。
「なあ玲。此の地は何故"約束の地(カナン)"と呼ばれるのだろう?」
「え?」
「一般論的に、お前はその名前に心当たりはないか?」
「…カナンって言えば、イスラエル…パレスチナを……聖書…旧約聖書…ユダヤ人……レグもそうだな。待てよ? キリスト教……異端のグノーシス教……前身がユダヤ教だとしたら……」
「だとしたら?」
櫂が、悠然とした笑いを作って僕を見ていた。
僕は慌てて、今自分が描いたパソコン画面…"約束の地(カナン)"の地形をよく見てみる。
主要箇所の名称を丸で囲み、線で結び……そして芹霞の邪痕の描画に重ねる。
邪痕は新たに伸びた分も推測で、描いていたものに付け足していくが、恐らくこの形での拡大でいいはずだ。
そして合わさった2つの描画は。
多少の調整は必要だったとはいえ、大体の形状は同じで。
「ああ、芹霞の邪痕…もとい、此の地の形状は…」
髪を掻き上げながら呟く僕に、
「そう、カバラ。生命の樹だ」
櫂が静かにそう言った。