あひるの仔に天使の羽根を
 

そして俺は言葉を一旦切って、横たわる芹霞をみた。


「どうして芹霞の身体に、生命の樹というものが邪痕で体現されるのかは判らない。だが…生命の樹の10個のセフィラが、此の地での魔方陣の位置づけ示すモノならば…」


煌と桜が同時に立ち上がった。


「場所さえ判れば叩ききってやるよ、俺達で」


顔を見合わせばいつも喧嘩ばかりして、こういう時の息はぴったりで。


「俺は……此処に居る」


静かに言った。


「ついて行きたいのは山々だが…もしも、万が一お前達が間に合わねば、俺はこの身を須臾に捧げようと思う」


「な!!?」


「そして俺が時間稼ぎをしている間、お前達は引き続き断行しろ。俺のことはいいから、必ず芹霞から闇の力を絶やして欲しい」


俺の――闇の痕跡を。


「………。…玲はどうするよ?」


煌が玲を見た。


「魔方陣が破壊出来るのは桜1人だ。だけど…僕も行くよ。煌から聞いたけれど、芹霞は煌と石の扉を開いたらしい。だったら、僕と煌とでも可能かもしれない。お前の血染め石、貸してくれ」


俺の…芹霞の血染め石。


芹霞の助けになるならば、喜んで渡そう。

投げた闇石は弧を描いて宙に舞い、玲の手のひらに収まった。


玲は微笑んで俺を見た。



「お前を須臾には渡さないよ」



俺の美しい従兄は、力強くそう宣言した。



「芹霞も、須臾には渡さない」



違うだろ、玲。


"俺には"渡さない。


本当はそれが言いたいんだろう?

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