あひるの仔に天使の羽根を
口に出さねど、俺達の血は繋がっている。
判るんだ、玲。
「ああ…俺も渡す気はない。どんな因縁も繋がりも壊してやる」
一瞬――
玲の鳶色の瞳が細められ、
「そうだね、同感だ」
そして俺に背を向け、遠坂に何やら指示をした後、玲は煌と桜と共に出て行った。
「大丈夫だよ、紫堂」
遠坂がパソコンを操作しながら、にっと笑った。
「僕と師匠は、連絡がつくから。状況はボクに逐一入る。
いいよ、紫堂。ボクは隣の部屋にいるから。何かあれば声をかけて。イクミ、また手伝って貰うからね?」
そして――
部屋に残るのは、俺と芹霞。
俺は芹霞の鯖に近寄り、血色悪い頬を手の甲で撫でた。
「……ん……」
意識はあるようだ。
だけど寝かせてやりたいと思った。
今芹霞が置かれている事態を認識させたくはない。