あひるの仔に天使の羽根を
「あのガキ共に、"中間(メリス)"とやらの攻撃を凌ぐ力あるのかよ?」
「……彼らは未知数だ。言えることがあるとすれば、普通じゃない。
普通なら、こんな状況下で生きていない」
「……"天使"、なのかよ?
もしくは――"悪魔"?」
私はそれに答えず、他の質問を促した。
答えられなかったのだ。
たかが羽根があるだけで、
そんな幻想的な存在だと言い切れるだけの確証がない。
私が把握出来ない領域に棲まう存在を簡単に認められないから。
煌は、またもや手を上げた。
「お前、その格好いつまですんの?」
私は苛立って目を細めた。
「てめえッ!!! 無関係なことを何今ほざくッ!!!」
「ほ、本気で殴るなッ!!!
気になったんだよ、お前も玲もついに遠坂に影響されて、コスプレに目覚めたのかって」
「……目覚めるわけ、ねえだろうがッ!!!
玲様に男装でいるように、言われてんだよッ!!!」
褐色の瞳は訝しげに細められる。
「……玲が?」
「思う処があるらしい。てめえを拾う前に玲様と合流した時、この地ではこのままでいるようにと言われたんだよッ!!!」
「ふうん?
でもまよく考えれば、お前は元男だし、男装してもおかしなことなんか…」
「よく考えなくとも、今だって男だッ!!!」
何て失礼な男なんだろう。
そして私は――
なぜこんな男に"男"を強調しているのだろう。
性別を捨てたこの私が。
愚かな"男"以外の何者でもない、この橙色に。