あひるの仔に天使の羽根を
暗い通路の方向は、間違いなくゲスト棟の方向に続いている
好調な滑り出しだ。
そう思っていた時、前方の玲から電子音が鳴り響いて。
「!!!」
突然玲が足を止めた。
「どうされました、玲様」
桜が怪訝な顔を向ける。
「櫂が…魔方陣破壊せず、戻れと言っている」
「はあ!? 時間ねえんだぞ!?」
「何か策でも見つかったのかな?」
また玲がちまちまと時計を弄くり、暫くしてまた電子音。
「な!!!」
それを見て短い声を上げた玲の顔は、明らかに血の気が引いていて。
「どうしたよ!!?」
思わず声を荒げた俺の顔も、きっと玲と同じように酷く強張ったものなのだろう。
鳶色の瞳は、やや伏せ気味に。
「どうやら…魔方陣は、対応する芹霞の身体に繋がっているらしい」
「は!?」
「つまり…魔方陣を破壊すれば、芹霞の邪痕における対応箇所も破壊される。
今――
各務の建物位置に該当する芹霞の喉元から、血が噴き出したそうだ。何とか櫂が止血したらしいけど」