あひるの仔に天使の羽根を

・一縷 櫂Side

 櫂Side
*****************


"峻厳と慈悲は均衡を保ち、彼の者に捧ぐ柱は玉を穿って大木と為す"

"大いなる智慧と理解の最果てにある勝利と栄光の王冠は、美しき王国の礎となる"


イクミ経由で遠坂から貰った、暗号めいた文章。


この文章に行き着くまで、玲の指示で多言語に翻訳した上での文字変換…所謂アナグラムの検証も、何千パターンという数をコンピュータに調べさせたらしい。


もしこの暗号がアナグラムであったら、俺には完全お手上げだった。


"約束の地(カナン)"の構想者であれば、"約束の地(カナン)"の歪み…穴も彼には判っていたはずだ。それでなくとも各務に裏切られ、その上で再度協力しあったのなら、必ず各務に対して自己防衛的な救護策があるはずだ。


レグは一体、何を残したんだ?


"峻厳"と"慈悲"。


それは相対する原理。


いわば男という父性原理と、女という母性原理。


それの均衡とは何だ?


「ねえ、美しき王国って、"蘇生"だの"停滞"だのの世界かな?」


かたかたかた。


音を奏でながら、遠坂がぼやいた。



「必ず、意味はあるはずなんだよね。姉御も断言してたし」


――それに書かれてあることこそ、レグの狙い。そしてそれを実行されれば、各務翁の望みは絶たれる。それに目をつけた鏡蛇聖会が奪還に動いている。

< 1,075 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop