あひるの仔に天使の羽根を
見せかけだけの爽やかさ。
彼を動かすのは必然な事象のみ。
無駄と面倒を好まず、刃向かう者は…己の強大な力でもって破壊する。
そこには慈愛の形骸もなく。
それ故に恐れられた、緋狭さんと並ぶ最強の五皇。
今は――
俺が頭を垂らすべき、日本の中枢に居る。
「あはははは。苦虫噛み潰しているね~、『気高き獅子』」
そして目の前にボンと投げられた、青色の風呂敷の包み。
「包みの色は変えさせて貰ったけど、アカから」
嘲るような嗤いを向け、どかりとソファに座った氷皇。
開けろと顎で促され、俺はその不遜な態度に動じることなく包みを開けて…。
「!!! これは……」
中から出たのは、裾の長い黒い服。
「あ、これ…2ヶ月前に櫂達が着ていた……」
「そ、元老院の正式対面をする時に、紫堂が身に付ける正装」
つまりは。
ここから先は、元老院として、接しろということか。
いやむしろ…心して聞けという意味合いなのか。
途端に酷薄めいた残忍な笑いを浮かべ。
「……意味は判るな。返事は? 紫堂櫂」
がらり。
氷皇の口調は、温度を下げる。