あひるの仔に天使の羽根を
とりあえず着替えたあたしは、即効元居た部屋に舞い戻り、櫂が不条理な扱い受けていないか目を光らせば、
「3方向!? 分散したって破壊できないことは、玲だって判っていただろう!?」
声を荒げているのは櫂で、その相手は氷皇ではなく、由香ちゃんに怒っているみたいで。
「時間がないというのに!!!」
よく意味が判らないが、玲くんと煌と桜ちゃん、3人はバラバラに動こうとしていることに、櫂は憤っているらしい。
そんな張り詰めた空気を更に悪化させたのは、
「あはははは~」
ビールを飲んで、我が物顔でソファにふんぞり返っている蒼生ちゃんで。
「悠長だな、まだそんなこと言ってるんだ、『気高き獅子』」
組んだ長い足を見せ付けるように、わざとらしくぶらぶらと動かしながら、やはり笑い声は何処までも…人を食ったかのような胡散臭さで。
「何で着替えさせたと思っている? 君も芹霞ちゃんも、向こう3人も」
「え?」
動きを止めたのはあたしだけじゃない。
「まああっちは、俺担当じゃないからね。あはははは~」
あっちって…どっち? 担当どちらさま?
「おっ可愛いねえ、芹霞ちゃん。自分好みに育てる光源氏の気分だ。さあ姫君、今すぐにでもアカの義弟にして?」
「却下!!!」
ふざけたことをぬかす男から、荒げられた声と共に…奪い去られるようにあたしは櫂の片手の中。
「ああでもそれ、偶然にもレイクンのとペアルックなんだ。お手々繋いで、初々しくデートとかしちゃうの? カレカノなんだものね、うっわあ、俺妬いてしまうなあ、あははははは~」
「……芹霞、すぐその青い服脱いで、俺の色の服を着ろ!!」
櫂が…まるで煌みたいな、わけ判らないこと言い出した。
絶対青い色に毒されている。