あひるの仔に天使の羽根を
・分散 玲Side
玲Side
*****************
突如現れた2つの人影に、僕の思考が大いに揺れた。
その内の1人は桜を傷つけ、敵として対峙したばかりだ。
半ば呆然と突っ立つ僕達に、緋狭さんはからかうような浅い笑いをみせると、何かをぽーんと僕に投げて寄越す。
赤い風呂敷布で包まれた大きな荷物。
それを胸元で受け止めたのはいいものの、どうしていいか判らず戸惑う僕に、緋狭さんは軽く笑って顎で促す。
開けろということらしい。
包みを開ければ、黒い色の服が3着。
開衿と詰め襟が組み合わされた、古代中国を思わせる特殊デザイン。
長い裾の…どこまでも闇色に染まった服。
こんなもの、そこいらにあるような代物ではない。
「…対元老院用の、正装じゃねえか!!?」
2ヶ月前、僕達が着用したものに間違いなく。
荷物を覗き込んだ煌が代表して、素っ頓狂な声を放つ。
「急ぎ、着替えよ」
短い言葉に込められた、絶対的な威圧感。
それは"緋狭さん"というよりは"紅皇"としての。
だけど僕達は。
一刻も早く魔方陣を破壊しないといけなくて。
着替えをしている"悠長さ"に従う余裕などなく。
だけど――思う。
緋狭さんの行動は……必然。
恐らくそれは、今の僕達に必要なことなのだと思えば。
「早く着替えよう」
だから――
僕は2人を促して着替えた。
煌は最後までぶつぶつとぼやいていたけれど。
完全に僕達が着替え終わったのを確認すると、緋狭さんはパチンと指を鳴らし…そして脱ぎ捨てられた服が炎に包まれた。
*****************
突如現れた2つの人影に、僕の思考が大いに揺れた。
その内の1人は桜を傷つけ、敵として対峙したばかりだ。
半ば呆然と突っ立つ僕達に、緋狭さんはからかうような浅い笑いをみせると、何かをぽーんと僕に投げて寄越す。
赤い風呂敷布で包まれた大きな荷物。
それを胸元で受け止めたのはいいものの、どうしていいか判らず戸惑う僕に、緋狭さんは軽く笑って顎で促す。
開けろということらしい。
包みを開ければ、黒い色の服が3着。
開衿と詰め襟が組み合わされた、古代中国を思わせる特殊デザイン。
長い裾の…どこまでも闇色に染まった服。
こんなもの、そこいらにあるような代物ではない。
「…対元老院用の、正装じゃねえか!!?」
2ヶ月前、僕達が着用したものに間違いなく。
荷物を覗き込んだ煌が代表して、素っ頓狂な声を放つ。
「急ぎ、着替えよ」
短い言葉に込められた、絶対的な威圧感。
それは"緋狭さん"というよりは"紅皇"としての。
だけど僕達は。
一刻も早く魔方陣を破壊しないといけなくて。
着替えをしている"悠長さ"に従う余裕などなく。
だけど――思う。
緋狭さんの行動は……必然。
恐らくそれは、今の僕達に必要なことなのだと思えば。
「早く着替えよう」
だから――
僕は2人を促して着替えた。
煌は最後までぶつぶつとぼやいていたけれど。
完全に僕達が着替え終わったのを確認すると、緋狭さんはパチンと指を鳴らし…そして脱ぎ捨てられた服が炎に包まれた。