あひるの仔に天使の羽根を

・分散 玲Side

 玲Side
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突如現れた2つの人影に、僕の思考が大いに揺れた。


その内の1人は桜を傷つけ、敵として対峙したばかりだ。


半ば呆然と突っ立つ僕達に、緋狭さんはからかうような浅い笑いをみせると、何かをぽーんと僕に投げて寄越す。


赤い風呂敷布で包まれた大きな荷物。


それを胸元で受け止めたのはいいものの、どうしていいか判らず戸惑う僕に、緋狭さんは軽く笑って顎で促す。


開けろということらしい。


包みを開ければ、黒い色の服が3着。


開衿と詰め襟が組み合わされた、古代中国を思わせる特殊デザイン。


長い裾の…どこまでも闇色に染まった服。


こんなもの、そこいらにあるような代物ではない。


「…対元老院用の、正装じゃねえか!!?」


2ヶ月前、僕達が着用したものに間違いなく。


荷物を覗き込んだ煌が代表して、素っ頓狂な声を放つ。



「急ぎ、着替えよ」


短い言葉に込められた、絶対的な威圧感。


それは"緋狭さん"というよりは"紅皇"としての。



だけど僕達は。


一刻も早く魔方陣を破壊しないといけなくて。


着替えをしている"悠長さ"に従う余裕などなく。


だけど――思う。


緋狭さんの行動は……必然。


恐らくそれは、今の僕達に必要なことなのだと思えば。


「早く着替えよう」


だから――


僕は2人を促して着替えた。


煌は最後までぶつぶつとぼやいていたけれど。


完全に僕達が着替え終わったのを確認すると、緋狭さんはパチンと指を鳴らし…そして脱ぎ捨てられた服が炎に包まれた。


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