あひるの仔に天使の羽根を
確実にこちらに向かう気配。
大量瞬殺出来る武器がないとするならば。
「覚悟しておけよ、馬鹿蜜柑ッ!!!
全ての相手を素手だけで乱戦だッッ!!!」
私の声を合図に――
入り乱れた雑音は大きくなり、
木々の葉が大きく揺れ、
夥しい数の男達が溢れ出てきた。
一瞬――
仮面をつけているのかと思った。
能面のような感情がない虚ろな顔。
眼差しだけはぎらぎらとした殺気に満ちて。
老いも若きも。
誰もが同じ顔をして。
そして――、
「俺にやらせろよ!!?」
そう叫んだ煌が、先頭の体格いい男が突き出した拳を、身を屈めてかわしながら、瞬時にその脇腹に肘を入れる。
吹っ飛んだ男は後方の集団の中に放られ、巻き添えを食らった者達は地面に崩れ落ちた。
槍のような丈の長い武器を持って、煌の背を襲う3人の男。
突き出される武器よりも早く、真上に飛んだ煌は、身体を捻りながら男達の背面に降り立ち、彼らの延髄を立て続けに手刀を入れて気絶させるのと同時に、その武器を奪い、円を描くように外旋させ、次々に襲いかかる男達の武器を弾きながら、柄の部分をその首筋に容赦なく強く叩き付ける。
自由自在に武器を操るその様は。
――俺、武器って凄い苦手。
そう顔を顰めていた言葉が嘘のように。
強靱な肉体とバネを利用して動き回る光景が、誰よりも自由でのびのびとしていて。
何だか私は――
羨ましいと思ってしまった。