あひるの仔に天使の羽根を
「しかし、物理的に数が……」
どう考えても、3方向にはなりえない。
「玲。扉は内外の2方向のみ…必要な方がそちら側から開けばよいのだ、3組必要ない。魔方陣は、桜と榊で破壊出来る」
「緋狭姉、計算おかしいって。俺でも、引き算出来るぞ? 第一緋狭姉は石の扉を開くことが出来ねえんだろ? しかも紫堂の血が混ざっていれば、魔方陣だって破壊出来ねえ。言わば緋狭姉は役立……」
「……もう一度、ゆっくりと言ってみよ。
最後の言葉だけでよい。
私が…何だ?」
すっと細められた、剣呑な黒い目に。
「!!!!!」
煌は震え上がって飛び上がり、あわあわと意味不明な言葉を繰り返した。
僕は助け船を出すように、1歩足を前に踏み込んで言った。
「緋狭さんの…持ち札がまだあるのですか?」
そうとしか考えつかない緋狭さんの言葉に、
「――…ああ、
丁度来たようだな」
軽やかな足音が闇の奥から聞こえて。
「きゃははははは」
その声に――
僕の顔は強張った。