あひるの仔に天使の羽根を
「此の地では双子が多く生まれる。ただ近親相姦抜きにしても、片方が畸形に生まれつきやすい。その畸形が肉体か精神か、それは生まれついてみないと判らないらしいがな。榊の調べではね」
「榊!!?」
俺の脳裏に浮かぶ、未知数の実力を秘めた紫紺色の服の神父。
「あいつは敵だろう。桜に怪我させた奴だ。
信用出来る相手ではないぞ」
思わず、顔を歪めさせて咎めれば、
「……だって。
やっぱり敵なのかな、由香ちゃん?」
俺の言葉を、何故か氷皇はそのまま遠坂に振った。
遠坂は、汗をだくだくと流して固まっていて。
「榊の身元は、君が証明出来るでしょ?」
対する氷皇は実に愉快そうに。
「由香ちゃん?」
芹霞が怪訝な声を向けた時、遠坂の眉毛が八の字に下がった。
「さ、榊兄は…
ボクの――…
兄貴デス」
消え入りそうな声で、遠坂はそう言った。