あひるの仔に天使の羽根を
 
それでもやはりアラが多く、動きは粗雑で。


玲様のような優雅さはまるでなく。


櫂様のような無駄のない動きとは到底言えず。


素早さは私の方が確実に上で。


そんな煌を見ていたら、私は傍観者でいられなくなって。


「お前ッ!!!」


私は命令される覚えはない。


私だって、櫂様を護る紫堂の警護団の警護団長だ。


裂岩糸がなくとも、こんな素人に負けるはずはない。


私達は背中合わせにして、数多い敵に構えを取る。


煌のおかげで数は大分減ったけれど、それでも敵は引く様子もないらしく。


依然、殺気立って私達を捉えている。


空は薄暗くなっていて。


逃げ切ることは出来る。


だけどここまでの侵入を許したツケは、払わないといけない。


私達がいなくなったとしても、あの子供達は残るのだから。


殺気の餌食になって、無事でいられるはずはない。


それは正義感なのか、贖罪なのか。


判らぬまま、私達は戦闘に入った。



< 111 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop