あひるの仔に天使の羽根を
チビと出会った"混沌(カオス)"に向けて、共に薄暗い通路を走った。
ひたすら真っ直ぐ進んだ鏡の迷宮が出てこねえ。
不思議と…石の扉も出てこねえ。
回り込むように斜めに走っている感が大きいけど…もしかしてこのチビ、石の扉を開かなくてもいい道を選んでくれているんだろうか。
「きゃはははははは」
……絶対、何にも考えてねえな。
こっちは焦っているのに能天気な声だすなよ、全く。
――ぎゃはははははは。
何だか…陽斗の笑いを思い出してしまった。
懐かしい顔を思い出してチビを見れば、何となくその顔のパーツが似ている気がしてくるけれど…特別あのチビ陽斗…司狼とも似ていないし。
だけど何だろう、故意的に気にしてみれば、チビから陽斗を彷彿出来る。
不思議だ――。
しかしこのチビ、すげえ体力あるよな。
全然足を止めずに全力疾走。
この勢いじゃ、横壁も天井さえも走れそうだ。
体力だけが取柄の俺の方がぜえぜえだぜ?
緋狭姉がいなくてよかったよ。
緋狭姉と一緒だったら、"駄犬"だなんだと、容赦ない過酷な基礎鍛錬項目追加だ、絶対。
本当に緋狭姉がいなくてよかった。
『……期待に応えてやろう。
毎日の走り込み100km10本も鍛錬メニュー追加だ、駄犬』
よかった……
『ほう、そんなに鍛錬がしたかったのか。それでは特別追加でもう10本増やすか?』
よかっ……
「いらねえよ!!! 何で、また緋狭姉の声が聞こえるんだよ、ちくしょう!!!」
離れたばっかじゃねえかよ!!?
何でバレるんだよ、いつも!!!