あひるの仔に天使の羽根を
緋狭姉。
悪いけれど、俺の頭で理解できるように説明してくれよ。
『……。玲や桜ならこれで通じたんだがな。まあよい。魔術的意味合いの強い"生命の樹"には、実は相反する"邪悪の樹"というものがある。生命の樹はいわば"聖"で、司る10個のセフィラには守護天使が配置されている。それに対し邪悪の樹はいわば"邪"で、司る10個のクリファには守護悪魔が配置されている。その天使10体、悪魔10体が、レグが開発した格闘ゲームKANANの主要キャラクターだ。
そして代替的に…その役目を担った外部からの抽選当選者は、魔術の色彩に飲み込まれ、"蠱毒"として効能を果たした。建前上は』
建前じゃなかったら、何だよ?
『お前達に久遠、樒、須臾、千歳、柾の5人を合わせた10人。これは各々の性格を見抜かれた上で、利用されているのだ。その属性は聖なる"生命の樹"ではなく、邪なる"邪悪の樹"の10個のクリファに対応している』
少し――興味を持った。
俺って何だろう。
『お前は……"愚鈍"。"エーイーリー"と呼ばれる第2クリファ…象徴悪魔は蠅の王ベルゼブブ』
"愚鈍"。
そのまんま、俺の欠点。
赤の他人に見抜かれていたっていうのが非常に悔しい。
そして。
俺の頭に浮かんだのは"生き神様"に食われていた男。
玲が見たと言っていた…"Beelzebub"の烙印。
俺…ハエかよ…。
『あくまで意味合い的なものだ、ビジュアルに拘るな、馬鹿者』
そういわれても、ハエだよ、俺……。
『ベルゼブブは、悪魔の王サタンを凌ぐという実力の持ち主で、悪魔に堕ちる前の天使の位階も高い』
おお、すげえよ、ハエ。
俺もう、叩き落せねえよ。
『………。ふう…』
大丈夫かな、緋狭姉。疲れているみたいだ。