あひるの仔に天使の羽根を
その存在を示唆することで、この地域を担当にした理由を悟った。
彼女は、体力に応じた振り分けをしたのだと。
私の力は…発作をおこしかけた玲様より"無い"という判定で。
口惜しく思うけれども、否定出来ない現実。
私が今、疲れも痛みも無自覚なのは、外部的要因があるからこそ。
それが無くなればきっと私は……。
私は唇を噛みしめ、手の中の小瓶を握りしめる。
緋狭様は、他の2グループと連絡を密に取り合っている。
時折怒鳴り声と溜息が混ざるのは、きっと馬鹿蜜柑が原因だろう。
緋狭様でも解決策が見つからないという、"邪悪な樹"の消去方法。
元々、鐘が鳴るまでの"生命の樹"の破壊のはずが、話が変わってしまった。
氷皇が櫂様にどんな提案をするのか判らないけれど、須臾が"生命の樹"に関連した力を操っているのだとしたら、今の私達の行動は何らかの変化を生じさせるはずだ。
――"転写"というより、"移動"に近いな。
この切羽詰まった間、緋狭様も推奨するこの破壊行為が、芹霞さんの体への"転写"だとすれば、その必要性の如何を審議するまでもなく…須臾が操っていたのは"此の土地"の生命の樹の力であって、その力が一時でも芹霞さんの体に移動することによって、須臾の操る力の源の効力は薄れることにもなりえるのだろう。
それでも邪痕自体を嬲れる"聖痕(スティグマ)の巫子"の力は未知数で。尚且つ、未だ姿を見せぬ"断罪の執行人"が関わり合うともなれば、この破壊行為だけで安心出来るはずもなく。
究極的には、地形が反転し"邪悪の樹"の力が芹霞さんにどう影響するのかを確認する前に、不穏分子たる"邪悪の樹"も破壊したいのが真情。
10個の魔方陣を力と武力で同時破壊という、無茶な方法があればだが。
緋狭様でも懸念する方法が、やがて来るその時までに"正解"を導けるのかは、彼女自身不明らしく。
緋狭様ですら煩慮させるものが存在すること自体、緋狭様を凌駕するといった"白皇"の奸計の一部なのだろうか。