あひるの仔に天使の羽根を
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日が沈むにつれて、人数は膨れあがり。


「おいおい、本気かよ!?」


殺さないようにと気をつける分、疲労は増してきて。


更にぬかるみが、益々足の重い枷となる。


"中間(メリス)"という土地を知らなすぎたのか。


ここまで人が増殖するとは思わなかった。


私達には戦闘の技術と経験があるとはいえ、これだけの人海戦術に個々で対抗するのは、完全体力と気力勝負だ。


せめて裂岩糸さえ使えれば、勝敗はすぐつくのに。


そう唇を噛みしめた時だった。


「きゃはははははは」


聞き慣れた子供の笑い声が聞こえたのは。


「危ねえ、どっから来たんだこのチビッ!!!」


そう焦った声を出したのは煌で。


私は――。


男達の殺気が強まったのを見逃しはしなかった。


たかがこんな子供に。


何で言う殺気だろうか。


そして――。


「お姉ちゃんトコ、行くよ~?」


目の前には――


無邪気に笑う月がいた。



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