あひるの仔に天使の羽根を
 
ただ…ひっかかっていることはある。


レグの真意を反映させたという…あの紙。


各務と神父が恐れて取り合うというその紙の……暗号めいた内容に沿って、緋狭さん推奨の元、僕達は動いている。


けれど。


それに対して白皇の妨害がないということは、彼もまたその内容を判っていたということで。


緋狭さんを含めた僕達の動きが、白皇の思惑の内というのなら…レグと白皇の思惑は重なっていたと言うことなのか。


藤姫を後ろ盾にした白皇が、同じ女に裏切られ利用されたレグと、どうして交じりあえることが出来るのだろう?


この先対峙することになる…"邪悪な樹"云々まで、白皇は見越していたのか。それとも…それを見越していたのはレグだけか。或いは双方とも判っていたのか。


藤姫の影がちらついた白皇が究極的に求めるものは、レグが求めるものと同じだと…断定するには、状況や立場的に奇妙すぎて。


そして。


それに対立する構図となる、各務家と神父…もとい、レグの作った人工知能を司令塔とした神父達。


緋狭さんは、此の土地には"3つ"の意思があると言った。


誰と誰の思惑が何処まで重なり、誰と誰の思惑が何処まで背反しているのか。


僕達の破壊活動の末に露呈されるものは、一体誰の思惑の…どんなものなのか。


櫂は――どう考えているのだろう。


機械的なメール内容だけでは、あいつの心は判らない。



間に合え。



ただそれだけを思って僕達は動いているけれど。



だけどお前は……

"覚悟"しているんだな?



それが非常に…哀しくて。

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