あひるの仔に天使の羽根を
音もなく、気配もなく。
厚い……敵の波を瞬時に掻き分けて。
幼女が私達を見上げている。
それは絶句するに値する出来事で。
「早く~」
今度はいつ抜け出したのか判らぬ敵の外で、手を振った。
「あいつ、マジすげえ……」
感嘆の言葉を漏らす煌と私が、敵の輪を振り切り抜け出すことは、然程難しいことではなく、
「早く~、早く~」
その場で飛び跳ねて手招きする月に追いついた私達は、先頭の月に誘導されるがままに、森を駆けた。
しかし追手がこないわけはなく。
「うるさいな~。早く行かないと、旭に怒られちゃうのに~」
月は頬を膨らませて、脇の木に移動した。
何か――
木の影に……鈍色に光るものが見えた。
「それ、先刻俺が解除した大鎌じゃないかッ!!!
おい、チビッ!!!
それ危ないし、すんげえ重いもんだから……はあ!?」
私も――
驚愕する。
3mはあるかと思われる巨大な弧を描いた刃――。
死神が持つ鎌よりも余程大きく重厚そうな大鎌を、その柄を、
「よいしょ」
容易く片手にとり、ぶんぶん振り回し始めたのだ。