あひるの仔に天使の羽根を
 


何で…こんな早く!!!


それとも僕達は、時間をかけすぎていたのか!!?


「あはははは。鳴っちゃったね、とうとう鳴っちゃった。13回鳴り終わったら、"聖痕(スティグマ)の巫子"動くよ?」


ああ――

月の戻りを待っている時間もないのなら。


「紫堂はどうするのかな。お姉さん助ける為に儀式をするのかな。あははは、見物だ。"1番枠"なのに…イロイロと大番狂わせだ!!!」


僕の脳裏に浮かぶのは、先程由香ちゃんからのメール。


『師匠、紫堂から。

間に合わねば、"断罪の執行人"を連れて来い。

どんなことをしても、絶対に』


それは…今だから判る、櫂の欲求。


僕はぎりと歯軋りをして、煌に怒鳴る。



「煌、此の場はお前に任せる!!」



「ああ……つーか、ええ!!?」



「司狼を煮るなり焼くなり好きにしろ。

僕は――

やらないといけないことがある!!!」



必ず間に合わせる。


櫂も芹霞も、絶対死なせない。




祈るような僕の決意の向こうにある"現実"を、既に櫂は見通していたというのなら。





――カラーン。





僕は――


僕の全てを櫂に賭けよう。



今僕が出来ることは、


あいつが望むものを与えることだ。



多分それが…芹霞を救う道になるばずだから。



悔しいけれど、あいつならきっとやれる。


あいつなら、芹霞を救える。



『気高き獅子』



伊達にそう名乗ってきたわけではない。



あいつは――


やることは"完璧"にやる奴だから。



僕は、櫂の"貪欲さ"に全てを賭けよう。



次の段階(ステージ)の主役をお前に譲ろう。

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