あひるの仔に天使の羽根を
道脇には、土下座する女性達。
僕だけが、対峙するように道の真ん中に立っていて。
真上になりきらぬ灼熱の太陽の暑さに、僕の額から汗がぽたりぽたりと滴り落ちて。
それを手で拭いながら見据える、遥か向こうに――
――カラーン。
やがて現れる、黒い存在。
その存在を凌駕するのは…旋回する大鎌。
真紅色の飛沫を上げて、空高く跳ね飛ぶ……女の頭部。
切り刻まれる…女の身体。
簡単に跳ね、簡単に転がり――
何と人間は…脆いものなのか。
だけど思うんだ。
残酷さだけが"強さ"ではない。
それは"温容さ"を支える、一部分にしか過ぎず。
人間であれば。ありさえすれば。
必ず一縷の望みは在る。
此の地でルールを犯した、僕達"罪人を
あえて見逃してきた…その事実に僕は縋ろう。