あひるの仔に天使の羽根を
――カラーン。
俺の断定に、心なしか場の空気に緊張が走る。
「教えてよ、俺に。俺やアカを凌駕するというシロの奸計を上回る、秘策とかいうものをさ」
動じない俺に、氷皇の気分が損なわれたのか、藍色の瞳が僅かに細められ。
「嫌だね」
俺は……にやりと笑った。
「あいつらが必死に俺に繋げた綱を、そう簡単にお前に渡すつもりはない」
すると氷皇は、突然笑い出して。
「"まだ"、有効だと? こりゃあいい、気高き獅子!!! 何1つ無駄に捨てることなく、全て拾い集めて大成する気か!!!」
「ああ。そのつもりだ。
後は俺が"完璧"に繋げてやる」
――カラーン。
「この鐘の音で、誰もがきっと絶望している。その中で、お前は諦めていないと?」
「ああ」
「全て解いたのか、此の地の謎を」
「………。少なくとも、お前が認識しうるものくらいは」
「その上で? 記憶を…戻すつもりもないのに?」
「………。ああ」
俺は芹霞を見ながら、短く頷いた。
「馬鹿だね~、カイクン。ひと言頼めばいいじゃないか。記憶を封じた主か…或いはそれと同等の力を持つ…例えば俺みたいな奴にさ。
綺麗さっぱり、昔に戻して下さいってさ!!!」