あひるの仔に天使の羽根を
――カラーン。
「ははは。それは頼もしい。
万が一そんなことがあったら…俺は待っているよ。
お前が迎えにくるのを、ひたすらにね」
服から離れぬ芹霞の手を、俺は上から握りしめる。
不安になるな。
俺を信じろ、と。
「櫂…ずっとずっと一緒だからね」
頬に零れ落ちる、一筋の涙。
「皆と一緒に…帰るんだからね?
誰も…櫂を置いて帰らないから。
全員で…帰ろうね」
――カラーン。
「さあ櫂――。
時間よ、行きましょう……」
13回目の鐘の音が消えると共に
須臾が部屋に現れた。
「……ああ」
俺は――頷いた。