あひるの仔に天使の羽根を
「どの口がそんなこと言っているのかしら、芹霞さん。貴方は私達に、何度も玲さんとの仲…見せつけたわよね? お付き合い…嘘だったの?」
あたしは言葉に詰まる。
お試しだけど、その名の絆を断ちたくなかったのは事実だから。
櫂の目が…見れない。
あたしの櫂だと主張するには、他の男性との絆は作ってはいけなかったの?
大好きな玲くんを、遠ざけないといけなかったの?
玲くんだけではなく煌も…彼らの好意を、あたしは一切拒絶しないといけなかったの?
あたしは…何も言い返すことが出来なくて。
「諦めがつかない厄介な女。いいわよ。櫂が私のものだという現実を見せて上げる。貴方も儀式に参加し…間近で私達を見ていればいいわ」
「な!!!」
明らかに櫂の顔色が変わって。
まるであたしの参加は、彼の"秘策"の想定外だったというように。
「貴方の目の前で…偽りの"永遠"、壊して上げる」
愉快そうに、笑い続ける須臾は、
「待て、こいつは関係ないだろ!?」
慌てた櫂の声を遮る。
「櫂に決定権はないわ。私に指図する気なら、今すぐ此処で壊して上げてもいいのよ?」
すっと上げられた片手に、
「やめろ!! お前に従うから」
掠れた声を発した櫂は素直に引き下がって。
嬉しそうな須臾の笑い声だけが響き渡る。
あたしのせいで、櫂が須臾に脅されている現実を再認識し…そしてまた一方的に"守られている"現実に哀しくなって。
だから――
「上等。行ってやろうじゃん」
櫂の"秘策"がどんな種なのか、判ってしまったんだ。