あひるの仔に天使の羽根を


「あたしだって…皆もそうだよ? 苦しめる内が華。苦しめなくなってしまったら、きっとそこでもう…お仕舞いだから」


由香ちゃんは、あたしをじっと見つめて。


「諦めないで前向いて行こうよ。あたし達は、必ず"幸せ"になる為に生まれて来たんだから!!!」


出来るだけ明るく。


いつもの"元気"が戻るように、あたしは励ました。



「神崎…紫堂のルーツは君だね」


「???」


「『気高き獅子』は、君が作ったんだね?」


「はい?」


「判らないか…君らしいや。

諦めるな、か。

ボクも師匠に言い続けてきたけれど…そうだよね、ボクも闘ってみるか…。もう逃げるのも…疲れちゃったし……見つかっちゃったし…」


それは誰に向けられた言葉だったのか。


ほんの一瞬。


はっとする程の"女"の情感を見た気になって息を飲んだけれど、すぐにいつもの由香ちゃんの顔に戻った。


見間違いだったんだろうか。


突き詰めてはいけない気がして、あたしは曖昧に笑いを返した。



「ねえ神崎。そういえば…イクミ、何処行った?」



それは突然の固い声で。



そういえば。


元々影が薄い(…失礼!)女の子だったけれど、確かに部屋には居たはずの彼女の姿はなく。


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