あひるの仔に天使の羽根を

「櫂達と出て行ったっけ? いや…2人だけだったしな」


あたしは腕を組んで首を傾げて。


「……。ねえ神崎。姉御が来た時ね…姉御さ、イクミ見て目を細めたんだ」


「緋狭姉が?」


「それでイクミ連れて酒と肴を探しに行っちゃったんだけれど」


「うん?」


「2人の会話って、ボク聞いてないんだよね」


「うん??」


「もし。もしもだよ……?」



「んん???」


あたし達は頭を突き出して、ひそひそ話す。



「イクミが敵だったらどうしよう?」



由香ちゃんの言葉に、あたしは目を細める。



「だけど玲くん助けてくれたし、他にも色々お手伝いしてくれていたじゃない。大体怪しかったら、蒼生ちゃん自体イクミに玲くんの世話任せないし。あの人、そういう処抜け目なさそうだし」


「その氷皇が見抜けなかったら? 例えば…"白皇"の手先だとか」


「ありえないでしょ!! だって彼女、貧民窟育ちでレグとシキミの世話してきた子だよ? 確かに物分かり良い子かもしれないけれど、蒼生ちゃんより頭のキレる"白皇"が、イクミを何に使うというの?」


「うーん、そうだよね…。だったらさ、姉御はどうして…」


「由香ちゃん、緋狭姉称えすぎだって!! 大体、氷皇で見抜けないのに、緋狭姉がそれ見抜いたって? ありえないから!!!」


あたしはげらげら笑った。


「姉御は偉大な神だぞ!!?」


妹よりも、他人のほうがよっぽど信頼がある。

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