あひるの仔に天使の羽根を
綺麗だと――
純粋に思える…鮮やかな橙色は。
彼の輪郭を拡張するように光放ち…すっと身体に取り込まれた。
それからの馬鹿蜜柑の動きは変わった。
早い。
偃月刀を持つ右腕を始め、全ての動きが別人のように速くて。
元々、煌の腕環は緋狭様のもの。
見掛けでは想像出来ない程の、尋常ではない重さを持つもので。
まるでそれの"手枷"から自由になったかのような軽やかな動き。
相手の動きを先回りして、自分にとってどう動くのが得策か…観察している余裕すら見える。
窺い見る緋狭様の顔は実に満足気で。
特に驚いた表情もない処から、煌の持つ潜在力というものを判っていて…あえて重い手枷を与えて力を抑圧させていたのだろうか。
鍛錬、修行。
怠けていてもこれだけの潜在能力は、その記憶無くともかつての"制裁者(アリス)"の№2の実力も頷けるもので、私の矜持をいやに刺激した。
やれば出来るのに、なぜやらない!!?
怒鳴りたくて仕方が無い。
恵まれた体躯と運動神経、格闘センスに潜在能力。
更に――
「此の分なら…来るな。あいつが…」
緋狭様の薄い笑いと同時に、場は更に紅蓮に燃えて。
「金翅鳥(ガルーダ)!!」
その名の存在は、噂に聞いたことがある。
最強と誉れ高い紅皇の相棒。
悪意や邪悪なものを炎で食らい尽すという神鳥。
それが…なぜ煌の中から。
そして――
司狼に勝ってしまったのだ。
誰が見ても、圧勝で。