あひるの仔に天使の羽根を


まるで氷のような…それは鏡面。そしてその中にあるのは…。




「男…!!?」



そう、まるで氷漬けられたように、大量の男が鏡の地面に取り込まれていて。


恐怖。


笑い。


それは人間の感情の果てを露わにしたまま。


老いも若きも…まるで生きているかのように。


腐らずに死んでいる…死蝋化しているのか。


その有様はまるで、男という人形の廃棄場所のようだ。



ああ――

地下にあったこの迷宮があるということは



「ひっくり返ったな」



煌が堅い声を発した。



「見ろよ」



煌が指差した先には…天に聳(そび)えるような背の高い塔。



あんなもの、今まではなかった。




「あの位置は……トゲトゲ…"境界格闘場(ホロスコロッシアム)"だった処だな」



私は頷いた。



どういうからくりで現れたのかは判らないが、恐らくはこの地形変異こそ、レグが"重力子"というものでやろうとしてた本来の姿で。


それを"白皇"が何処まで許容しているのかは謎だけれど。


迷宮が地下にあったものと同じなら、抜け道くらいは覚えている。


やはりこれも、"真っ直ぐ"が正解で。


抜け出た先は、"中間領域(メリス)"市街地らしかった。


無機質ばかりの風景に、色と動きが混ざり始める。


わいわいとした賑やかな声。


色取り取りの…洋服。


見れば、道に集まっている女達。


今まで領域(エリア)別に隔離されていた、貧富と階級の差がある女達が一同に集い…男が眠る鏡の地面を踏みつけて。




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