あひるの仔に天使の羽根を
「儀式よ!!!」
「祭りが始まるわ!!!」
狂喜する女達。
何がそこまで彼女達を高揚させるのかは判らない。
しかし――あの至悦感に満ちた顔。
そこまで儀式や祭というものは、住民に支持されているものなのか?
不意に旭の言葉を思い出す
――"約束の地(カナン)"には、"きょうそさま"が崇める"いきがみさま"がいます。そのいきがみさまをたたえるお祭りが、近く行われます。その時だけ、"約束の地(カナン)"で争ってはいけないんです。
男を喰っていたという"生き神様"。
そして、その巫子だという女が、櫂様に選択を突きつける。
それが祭の前の儀式。
どう考えても、穏やかな祭ではないのは確かだ。
まるで…2ヶ月前の御子神祭にも似て。
「……似て?」
――いきがみさまによって、"善"も"悪"もまるで関係なく、ぼく達は1つになれるんです。しかしそれが終わればまた――
ああ、だとすれば。
2ヶ月前が擬態なのか。
それとも、今が2ヶ月前の擬態なのか。
このままだと起きるだろう。
「"約束の地(カナン)"全体の蠱毒が」
私の呟きを煌が聞き咎めると同時に、私は見つけて。
見間違えるはずがない。
あれは――
「芹霞さんッ!?」
間違いない。
夥(おびただ)しい数の女達の間から垣間見えたのは、紛れもない芹霞さんの姿で。
青いドレスを着た、芹霞さんが…大勢の黄色い神父に連れられて、塔の中へ。
「行くぞ、煌ッ!!! 芹霞さんが連れられたッ!!!」
私は、押し寄せる人波を避けるように身体を細かく動かし、とにかく塔に向けて走る。
無論、このくらいはついてきているだろうと…途中後ろを振り向けば。
「……てめえ!!!
さっきの素早さは、その場限りだったのか!!?」
いつもの愚鈍な馬鹿蜜柑。
何故、女の波に飲まれている!!?
手しか見えないって、何事だ!!?